初心者向け格安ギターとバンドメンバー募集のグローバルサウンド新宿
初心者向け格安ギターとバンドメンバー募集のグローバルサウンド新宿
社会人音楽サークル
新宿音楽コンテスト
バンドメンバーを募集する バンドのライブチラシ作成 音楽コラム

移籍は究極の転職

音楽雑誌の記事や広告を見ると、「移籍、第一弾!」という言葉を見かけることが多い。
かつては大人気だったアーティストが、最近聞かないなと思っていたら、それまでとは違ったレコード会社から新譜を発表した。
人気絶頂のバンドが、契約金数億円で他のレコード会社に移籍した。
こんな記事を見て、不思議に思うこともあるだろう。
これはいったい、どうしてなんだろうか。まず、ヒントとして、

・レコード会社はアーティストがデビューするときに大きな投資をする。
・契約は、二年間が一つの単位であることが普通である。

この二点を思い出してもらおう。
デビュー時は基本的に知名度がゼロだから、資力、労力をフルに使って、そのアーティストを売り出そうとする。
その後は、売れ行きに応じて、作品の発売時期に合わせての宣伝展開になるし、制作費も変わってくる。
大きく展開できればいいのだが、ちょっとつまずくと、かなり地味な、ガマンの日々を迎えることになる。
デビュー前に評判が高ければ高いほどそのギャップは大きく、まだ余韻が残っているあいだに、他の環境に変わりたいと思う。
昔の実績が有名なうちに、と考えるのは自然だろう。
そこに、他社のレコード会社のお誘いがあれば、すんなりと移籍が成立する。
会社の人事異動で、それまでうまくいっていた制作や宣伝のスタッフが変わることになり、新しいスタッフでは不安だ。
自分たちは自信があったのに、発売されたら、非常に悪い結果が出てしまった。
イメージもガタ落ちだ、とか。
売れてはいるものの、今のレコード会社のスタッフにマンネリを感じるし、新しいアイデアも出てこなくなってしまった、とか。
回りでデビュー以来順調に仕事をしていた優秀なスタッフが、他社に引き抜かれることになった。
こっそりと、自分たちも一緒に移らないかと誘われている、とか。
アーティストもプロダクションも、レコードビジネスを仕事にしているプロフェッショナルだから、お金が必要なのは当然である。
しかし、お金以上に移籍の理由となるのは、環境の変化を求めるときなのだ。
ということは、世間でいわれる転職と同じなのだろうか。
かつては、電話帳のように分厚い求人雑誌が書店や駅の売店に山積みされていた。
今では、業種別に雑誌の種類が分かれている。
時代が変わり、呼び方も、転職マガジンになった。
何でもいいから仕事がほしい、という人は少なくなり、自分の能力や個性にあった職業を探す人が増えてきた。
収入は少なくても、満足度の高い仕事を求めるのがあたりまえにもなってきた。
転職する理由は、収入よりも、仕事の内容とまわりの人間関係に原因があることが多い。
僕たちのような音楽関係の仕事は、中身は好きな音楽を扱っているのだが、まさに、人間関係の縮図だと言えるだろう。
バンドの移籍も、スタッフの移動も、じつは、この人間関係が、その理由のすべてだといってもいい。
有望な新人が話題になったり、実績のあるアーティストが移籍を考えているという話が起こると、
複数のレコード会社のあいだで争奪戦がくり広げられる。
金銭的な条件は他社よりも悪いが、スタッフの仕事ぶりや所属アーティストのイメージが判断材料となり、
移籍が決定したという例は、僕のまわりにも数多いのである。
この数年間のうちに、僕のまわりのアーティスト達は、その半数が入れ替わっている。
他社に移籍して活躍を続けている人もいる。
バンドが解散して音楽をやめた人もいる。
僕の結論としては、移籍に大賛成である。
居心地のいい環境を求めて、アーティストは動いてほしいと思う。
特に、ロックやポップスは、生活環境によって、作りだされる音楽が大きく変化していく。
アーティストがベストの環境のなかで最大の能力を発揮してくれることが、レコードセールスを生み出す要因になるのだ。
移籍は、究極の転職といってもいいだろう。
レコード会社、レーベルイメージは、一般のファンにとっては気になるだろうが、
バンドにとっての移籍は、そのアーティストにふさわしいスタッフがいるかどうか、という一点に尽きる。
会社は組織だから、組織として動くのは事実だが、スタッフの熱意とアーティストに対する愛情が全体のチームワークを動かしている。
制作、宣伝、販促。このスタッフが一丸となって一つのアーティストに力を注ぐとき、そのCDは、必ずいい結果を出している。
言葉で語るほど簡単な作業ではないが、そんな環境を求めて、アーティストは移籍を考えるほうがいい。
僕たちが一組のアーティストを引き受けるということは、彼らがその能力を十分に発揮し、
作りだした作品を世の中に広げていけるような環境をどう整えられるかということなのだ。
デビュー以来約十年間、僕が仕事としてつきあってきたロックバンドL。
すばらしいライブパフォーマンスと斬新な楽曲で、デビューからの五年間は、飛ぶ鳥を落とす勢いで実績を伸ばしつづけてきた。
六年目に入ったころから伸び悩みはじめ、スタッフを交代したりライブの内容を作り替えたりしていたが、実績はダウンした。
アーティスト、マネジメント、レコード会社の間で議論がくり返されたが、名案は出ないままだった。
最後の一年間、それまでにはなかった方向での作品を出し、大量のライブを行ったあと、
その結果をふり返ったメンバーの結論は「移籍を希望する」ということだった。
長いつきあいが培ったお互いの愛情、担当スタッフの悩みが大きかったのは言うまでもない。
しかし、まだまだ若く将来性のある彼らを気持ちよく送りだしてやることが、僕たちのできる最大の方法である、
と全貫の気持ちは一致せざるをえなかったのだ。
こんな悔しい思いも、僕たちの仕事にはつきまとっている。
仕事をする上でのキャパシティとノウハウ、そしてアーティストとの相性。
デビュー時にはうまくいっても、時間の経過とともにさまざまの問題が生じてくる。
音楽性の変化、活動環境の変化、なによりも時代の変化。
僕たちスタッフは、時代の一歩、二歩先を読みながら、アーティストが半歩先を歩めるような状況を作っていかなければならない。
どんなに愛情が深くても、意気投合しても、実績が上がらなくては、
スタッフにとっても、またアーティストにとっても、プロとしての仕事も生活も成立しえない。
このバンドLのように、実績が落ちたとはいえまだまだ将来性がある場合、
活動を順調に続けていれば、スタッフの環境を変えることで再浮上のチャンスは残されている。
逆に、これまでのスタッフも、他のアーティストと組むことで、次の活路を見いだせるかもしれない。
可能な限りのアイデアを試みて、それ以上の打つ手がなくなったとき、環境を変えることは、アーティストにとって最良の選択だと思う。